膀胱炎などの尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎)

尿路感染症
(膀胱炎・腎盂腎炎とは)

尿路感染症とは、細菌が膀胱または腎臓に入ることで起こる疾患です。
下記の2つの疾患は両方とも、尿路感染症の仲間とされています。

膀胱炎

膀胱に細菌が入ることで発症する疾患です。細菌が尿道から膀胱へ逆流することで生じます。一般的に熱は出ないとされています。

腎盂腎炎(じんうじんえん)

膀胱よりも高い位置にある腎臓へ、細菌が移ることで発症する疾患です。

腎臓よりも下に位置する、膀胱の方が感染しやすい傾向にあります。そして両方とも、男性の患者様より女性の患者様の方が多く見られます。また、2つとも同じ尿路感染症のくくりに入りますが、腎盂腎炎は膀胱炎と違い、発熱や吐き気などの全身症状が現れます。重症化するケースもあるため、早期治療が重要になります。

膀胱炎の症状

  • 排尿時痛(尿を出すと痛い、しみる)
  • 頻尿(何度もトイレに行きたくなる)
  • 残尿感(排尿後なのにもかかわらず、まだ尿が残っている感じがする)
  • 尿意切迫感(急にトイレへ行きたくなる、トイレ後なのにもかかわらず、すぐに出てしまう、漏らしてしまう)
  • 血尿(尿に血が混じっている)

など

腎盂腎炎の症状

など

尿路感染症の
検査・診断と治療

診断・検査

尿路感染症の検査・診断と治療

先述した症状がないかを問診でお伺いしてから、尿路感染症の診断を下します。また必要に応じて、尿検査や尿培養検査などの検査を受けていただきます。
尿検査では、白血球や潜血が尿の中に含まれていないかを調べることに加えて、直接顕微鏡で細菌の有無を確かめていきます。検査時間は機械にかけてから、1分程で終了します。
尿培養検査とは、細菌の菌種と抗菌薬への感受性を調べる検査です。治療方法を決めるために行われます。培養検査は結果が判明されるまで約3~5日間かかるので、よく見る菌種(全症例の約90%が大腸菌ですが、過去の検査結果や併発している疾患の有無も頭に入れて検査します)である可能性を考慮して、治療を始めます。治療の経過と培養検査の結果を踏まえて、より適切な治療を行っていきます。

両検査とも、トイレ内で尿を採尿カップへ採っていただくだけで実施できます。

治療

治療抗菌薬(抗生物質)を使い、感染症を引き起こす細菌を死滅させて改善を目指します。
再発や難治化(疾患が治りにくくなること)する恐れがありますので、処方された薬は全て飲みきりましょう。
また、水分をしっかりとることも重要です。

膀胱炎の場合

3~7日間、抗菌薬を飲み続けます。

腎盂腎炎の場合

7~14日間、点滴または抗菌薬の服用を行っていきます。熱が下がるまでの間は、抗菌薬の点滴を続けていきます。その後は抗菌薬の服用を継続します。また、重症度や持病(糖尿病や神経疾患、泌尿器疾患など)によっては、入院をお勧めすることもあります。

経過

膀胱炎の場合

抗菌薬を服用し始めてから、2~3日以内に症状が緩和されるケースが多いです。

腎盂腎炎の場合

治療を始めてから3日以内に熱が下がっていくことが多いです。それ以外の症状につきましても、1週間ほどで良くなります。3日以内に熱が下がらなかった場合は、造影剤を使ったCT検査を受けていただき、治療方針を変更します。その際は、他の医療機関へお繋ぎします。
治療開始後~3日以内に熱が下がらない場合は、腎盂腎炎以外の原因が隠れている可能性があります。腎盂腎炎の悪化により腎臓に膿ができてしまい、巣状細菌性腎炎(そうじょうさいきんせいじんえん)や腎膿瘍へ移行している可能性が高いです(これらの疾患は腎盂腎炎よりも治るまで、時間がかかります)。

膀胱炎の予防

膀胱炎様症状(頻尿など)を繰り返す場合は、膀胱炎以外の原因が隠れている可能性があるため、検査を受けていただきます。
何度も膀胱炎が繰り返されている場合は、以下の予防法を行ってみましょう。

水分をよく摂る

普段摂っている水分量より、1.5L多めに摂ると効果的です。

(更年期以降)膣内
エストロゲン製剤を用いる

膀胱炎の予防に有効です。

セックスの後に排尿をする

はっきりとした効果が証明されていない方法ですが、手軽に、かつ安全に行える方法ですのでやらないよりはよいかもしれません。

抗菌薬を予防内服する

まずは他の方法を一通り行った結果、特に改善が得られなかった場合は、抗菌薬を服用していただきます。デメリットよりもメリットの方が大きい時に用いられる方法ですが、強く推奨することはありません。

よくある質問

抗菌薬は飲みきらないといけないのでしょうか?

絶対に飲みきってください。服用を中断してしまうと、再発・難治化のリスクが高くなります。なお、服用後に発疹などの副作用が現れた際は、速やかにご相談ください。

無症状ですが、尿の中に細菌がいる(細菌尿)と指摘されました。治療を受けた方が良いのでしょうか?

これは「(むしょうこうせいさいきんにょう)」という状態です。当院では、妊娠中の患者様のみ、無症候性細菌尿の治療を行っています。その理由ですが、妊娠している方の無症候性細菌尿は、早産のリスクが高いと報告されているからです。
しかし、60代以降の患者様の約10%、80代の患者様の約20%には、無症候性細菌尿が認められると言われています。それらを治療するメリットは現在のところ、はっきりと言われていないため、ほとんどの場合は経過観察のみ行っています。症状が現れている場合でも、治療を行うか否かは、慎重に検討してから決めています。

尿路感染症にはクランベリージュースやクランベリーサプリメントが、効くと聞きました。それは本当でしょうか?

クランベリーの効果ははっきりと証明されていませんし、それらの商品の中には、特に効果がないと言われているものも存在します。
しかし、性行為後の排尿と同じように、効果がきちんと立証されていない対策の中には、安全に実行できるものもあります。安い製品でしたら、一度試してみても問題ないのかもしれません。

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