排尿時痛

排尿時痛(おしっこの痛み)とは

排尿時痛とは、尿を出す時の痛みのことです。主に、膀胱や尿道付近に痛みが出現する状態を指します。
痛みの度合いは一人ひとり異なり、「なんとなく違和感があるな」と感じる程度のものから、激痛が走る、我慢できないほどの痛みまで、多岐にわたります。

主な痛みの感じ方

排尿時痛は、膀胱や尿道に出現した焼けるような痛みのことを言います。細菌やウイルス感染、粘膜の傷などによって起こります。出現する痛みの内容は、原因となる疾患やその影響によって変わります。
痛みは身体からの危険信号です。この危険信号が「尿を出し始めた時に出現したのか」、「尿を出し終わった後に出現したのか」によっても、疑われる疾患は異なります。また、男性と女性は身体の作りが違うので、性別によって原因疾患が変わるケースもあります。
我慢できない程の激しい痛み(ズキズキする痛み)が出現した際は、尿路に炎症が生じている可能性が高いので、早めに当院へ受診しましょう。

排尿時痛(おしっこの痛み)の分類

排尿時痛は、痛みが出現したタイミング、痛む箇所によって分類されます。関連疾患もそれぞれ異なります。

分類

痛みが出現するタイミングによって、「初期排尿時痛」「終末期排尿時痛」「全排尿時痛」と分類されます。

初期排尿時痛

尿を出し始めた時に出現する痛みです。 炎症している部位に尿があたり、その刺激によって出現した痛みとされています。
突然我慢できない程の激しい痛み(疼痛)や、灼熱感を感じる傾向があります。

可能性の高い疾患
  • 尿道結石
  • 尿道炎(淋菌感染病やクラミジア感染症など)
  • 前立腺炎

終末時排尿痛

尿が出終わった後に出現する痛みです。排尿が終わった時に、膀胱上皮が互いに接触することで生じる痛みと言われています。
尿道部(尿が通過してきた道)に「ズキッ」とした痛み、ツンとした「しみる痛み」を感じるケースがよくみられます。

可能性の高い疾患
  • 膀胱炎(急性膀胱炎)
  • 腎盂腎炎
  • 前立腺炎
  • 尿路結石

全排尿時痛

尿を出し続けている間、常に痛みを感じている状態です。 全排尿時期(排尿開始時~終わりまで)に痛みを感じる場合は、強い炎症があることで尿を通過する時に、持続的に痛みが続くのではないかと言われています。膀胱炎が再発して長引いて、慢性化していることで起こります。

可能性の高い疾患
  • 急性膀胱炎(高度なタイプ)
  • 腎盂腎炎
  • 間質性膀胱炎・膀胱痛症候群
  • 尿道狭窄症

痛みを感じる場所

痛みの出現箇所は、性別によって傾向が変わります。これは、身体の作り(尿道の長さなど)と、関連する疾患が違うためです。
大きく分けると「尿道の痛み」と「下腹部の痛み」に分類されます。

男女の尿道の違い

尿道とは、尿が通過する、膀胱から外尿道口までのことを指します。女性は男性よりも尿道が短いので、細菌が外尿道口から入り込むと、すぐに膀胱まで辿り着いてしまいます。そのため、男性よりも膀胱炎にかかりやすいのです。また、男性は尿道の間に、前立腺という臓器が存在します。

尿道が痛む(男性の患者様に多い)

男性の場合、排尿した時に痛みがある、尿道から膿が出ている場合は、細菌感染による尿道炎や前立腺炎などの炎症性疾患が疑われます。
尿を出し終わった後に痛みが出現した時は尿路結石や膀胱炎が疑われます。 また、我慢できないほどの痛みや膿の色(白または黄色)によっては、性感染症の可能性も考えられます。パートナーの方も一緒に感染している可能性もあるので、早めに当院へご相談ください。

下腹部が痛む・違和感を覚える(女性の患者様に多い)

女性の場合、急性膀胱炎の発症率がかなり多いです。急性膀胱炎になると、膀胱のある下腹部が痛くなったり違和感を覚えたりするようになります。尿道が男性よりも短いので、外尿道口から細菌が入りやすく、膀胱の粘膜に感染して発症しやすいのです。
また特に、20~40代の若い女性に多い傾向があります。 特に身体の冷えや過労によって免疫力が落ちてしまうと、再発や長引く可能性が高くなります。

背中から脇腹にかけて痛い

腎臓・尿管の炎症、腫れ、もしくは結石が疑われます。炎症の度合いや結石のサイズによって、痛みや度合いも異なります。尿管結石の場合は、尿と一緒に結石が排出される可能性もありますが、緊急を要する場合や難治性の場合は、カテーテル治療や破砕治療などを検討する必要があります。
また、高度な治療をすぐに受けなければならない場合は、連携先の医療機関を紹介させて頂きます。

排尿時痛(おしっこの痛み)の原因

日常生活に原因がある場合

疲れやストレスで免疫力が下がっている

排尿時痛の多くは、尿の通り道で起きた感染症によって起こります。健康な状態でしたら、身体が元々持っている免疫力によって、発症を抑えることもできます。
しかし、日常生活で生じた疲れやストレスなどによって身体に負担がかかって、免疫力が低下している時は、発症しやすい傾向にあります。特に、以下のような状況には気を付けましょう。

免疫力低下によって、感染症が起こりやすくなる状況
  • 風邪をひいている時
  • 仕事や学業などで忙しく、疲れが取れない時
  • 子育てや家事に追われ、きちんと休息できていない時
  • ストレスが溜まっている時(悩みなどがあり、精神的ストレスを抱えている時など)

性交渉による感染症

このケースは特に、10~20代の若い方によくみられます。近年では、性行為の低年齢化による影響で、「痛み、膿が出る、性器がかゆい」といった症状を訴えて受診される若年層が多い傾向にあります。
自覚症状に乏しいことで、知らず知らずのうちに進行してしまうケースもよくありますので、日頃からコンドームの装着や予防策を身に付けましょう。

原因となる「病気」がある場合

男性も女性も、「何らかの病気」が原因で排尿時痛になるケースが多いです。

膀胱炎

尿を出し終わった後に、痛みを感じます。細菌が膀胱内に入り、膀胱の粘膜に感染することで起こる炎症です。炎症が起こった時に尿を出すと、急な収縮が生じて膀胱も刺激されます。その結果、下腹部や尿道口に痛みが走ります。
炎症がひどくなると、尿に血が混じる(血尿)ようになります。男性よりも女性に多くみられる疾患です。

腎盂腎炎(じんうじんえん)

尿を出し終わる頃や、尿を出している間に、痛みが現れます。膀胱の中にあり、尿を貯留する働きを持っている腎盂(じんう)や腎臓に、細菌が感染することで発症する疾患です。尿道口から入り込んだ細菌が尿道と膀胱、尿管を通過した後、腎盂へ辿り着くことで発症します。大腸菌によって発症するケースが一番多いです。 腎盂腎炎を発症すると、背部痛(背中の痛み)や腰痛が現れることがあります。
また、尿中の白血球が増えて、尿が濁ってしまうこともあります。尿道が男性よりも短く、かつ尿道口が肛門に近い(大腸菌に感染しやすい)女性に多くみられる疾患です。

尿路結石(尿管結石)

尿を出した後に痛みを感じます。腎臓で発生した結石(シュウ酸・尿酸などでできています)が尿路のどこかを傷付けたり、尿の通りを詰まらせたりすることで、痛みや血尿などの症状が現れる疾患です。
結石が詰まった箇所(腎臓と尿管、膀胱、尿道)によって、疾患のタイプが分かれており、結石のサイズや詰まった場所によって、治療内容が変わります。「痛みが何度も繰り返される」「排尿するのに時間がかかる」など生活に支障をきたしている場合は、当院へご相談ください。

前立腺炎(急性前立腺炎:細菌感染性前立腺炎)

尿を出し始める時に、痛みが現れます。主に、尿道から大腸菌またはブドウ球菌が入り込み、前立腺に感染することで炎症を起こす疾患です。尿を出し始める時の痛みをはじめ、頻尿や残尿感などの症状が起こります。進行すると痛みも強くなり、高熱や倦怠感などの全身症状が現れます。20~30代の若い男性がかかりやすい疾患です。

尿道炎

尿を出し始める時に、焼けるような痛みが出現します。細菌に感染することで尿道に炎症が生じ、尿を出し始める頃から出し終わりまで、焼けるようなヒリヒリした痛みを感じます。性行為によってクラミジア菌・淋菌などに感染することで発症するケースが多く、男性の方がかかりやすい傾向にあります。
透明・淡い黄色・白色の膿が尿の中に混じっている場合は、当院へご相談ください。放っておくと尿道狭窄症を引き起こし、排尿に支障をきたすようになります。

性器クラミジア感染症

日本で一番多い性感染症です。男性が発症すると、尿が出始める時に「痛い」「しみる」といった症状が現れます。女性感染者の80%近くは、自覚症状に乏しく発症に気付いていないと報告されています。

受診のタイミング

痛みが軽い場合は、痛みの自覚症状が出てきてから1~2日以内に、受診されることをお勧めします。なるべく早めに受診するに越したことはありませんが、すぐに行けない場合は、当院へ一度ご連絡ください。我慢できないほどの痛みがある場合も、迅速に受診することをお勧めします。

排尿時痛の検査・診断方法

排尿時痛がある場合は、問診で以下の内容をお聞きします。問診が終わりましたら、各検査へ移ります。

問診でお聞きする内容

症状が現れた時期、その経過
  • 痛みが現れた時期
  • どういった時に痛むのか
身体所見
  • 身体のどこが痛むのか
  • その他、気になる症状の有無
  • 性行為歴
  • 放射線治療を受けてきたか

など

当院で行う検査

尿検査(検尿)

一般的な尿検査は、尿定性・尿沈渣(にょうちんさ)と大別されます。排尿時痛が現れた際はまず尿検査を受けていただき、炎症や血尿がないかを確かめます。尿定性検査は、30秒~2分程度で検査結果が分かるシンプルな検査です。尿沈渣検査は、採取した尿を遠心分離機にかける検査です。沈殿物を顕微鏡で確認することで、白血球・赤血球の数や細菌・細胞などの量・そのタイプが分かります。

女性は以下のことに注意しましょう

生理中やおりものが多い時、膣が萎縮している場合は、結果が正しく出てこない可能性があります。
ご不明な点がありましたら、お気軽にスタッフへお声がけください。

尿培養検査

尿検査を受けた結果、「白血球反応」や「潜血反応で陽性」になった場合は、膀胱炎の診断が下されます。その場合は、尿検査と同時に「尿培養検査」も実施します。これは、膀胱炎を引き起こした細菌を調べるために行う検査です。
培地(ばいち:菌が増えやすい成育環境)で菌を増やすことで、原因菌が特定できます。結果は1週間程度で分かります。原因菌が特定できましたら、それに合わせた抗生物質を処方します。

患者様へ

「治療を始める前の尿」を使って検査を行います。そのため抗生物質を服用していると、正しい検査結果が獲得できなくなります。

採血

発熱がありましたら、炎症の重症度や腎機能障害の有無を調べる必要があります。なお、血液検査を行っても、膀胱炎などの感染症が発見できるとは限りません。ただし、全身の炎症の度合いや臓器の機能低下などを調べるのに有効とされています。

腹部超音波(エコー)検査

膀胱炎と診断して治療を続けた後でも、症状が繰り返される場合は、膀胱壁に異常がないかを確かめる必要があります。
確認後に、治療プランを決めていきます。

治療について

原因疾患などを治す治療を行います。排尿時痛でよく見られる膀胱炎の場合は、抗生剤(抗生物質)服用していただき、一旦様子を伺います。
ほとんどの場合1~2日程度で症状が落ち着きます。ただし症状が落ち着いた場合でも、出された薬は必ず全て飲みきってください。痛みがひどい場合は、鎮痛剤を処方して痛みを緩和させます。

  商品名 薬の名前(薬の形状)
※ジェネリック医薬品の
名称にもなります
大体の服用期間
ニューキノロン系抗生剤

クラビット錠

シプロキサン錠

グレースビット錠

レボフロキサシン

シプロフロキサシン

シタフロキサシン
3日
ペニシリン系抗生剤 オーグメンチン配合錠 クラブラン酸アモキシシリン 7日
ホスホマイシン系 ホスミシン錠 ホスホマイシン 2日
ペネム系 ファロム錠 ファロペネム 7日
セフェム系抗生剤

ケフレックスカプセル

フロモックス錠

セファレキシン

セフカベンピボキシル
5~7日
ST合剤 バクタ配合錠 スルファメトキサゾール・トリメトプリム 3日

※患者様によっては抗菌薬のタイプが体質に合わず、下痢になる可能性もあります。
その場合は整腸剤を処方したり抗生剤を変更する必要がありますので、遠慮せずに医師へご相談ください。

痛みや炎症を抑えるお薬

商品名

薬の名前(薬の形状)
※ジェネリック医薬品の名称にもなります

服用期間(服用するタイミング)
ロキソニン錠 ロキソプロフェンナトリウム(錠剤) 1日~2日(痛みが出現した時に)
カロナール錠 アセトアミノフェン(錠剤) 1日~2日(痛みが出現した時に)
ボルタレン錠 ジクロフェナクナトリウム(錠剤) 1日~2日(痛みが出現した時に)
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